「ブナの路 」を歩き始め、右手の三頭沢に目を向けると令和元年に東京を直撃した大型で強い台風19号「ハギビス」の爪痕が未だに残っていた。私の住んでいる近くを流れる多摩川が危険水位を超えて、初めての緊急避難指示があったことを思い出した。
一旦、降りだしてきた雨は小雨に変わってきたがここからムシカリ峠までは階段状の露岩帯を歩いて行くので、滑らないように注意した。
そして再び雨脚が強まってきた。この頃になると車で都民の森まで来て、「出会いの路」から鞘口峠を越えて三頭山の東峰・中央峰・西峰と三つの山頂を踏んで私が歩いている「ブナの路」を下山ルートにしたハイカーたちとすれ違うことが多くなった。みなさん、当たり前のことだが雨具や傘を使い下ってくる。雨具なし・傘なしの私を見たハイカーたちはおそらく、奇異な感じがしたことだろう。
雨脚は衰えるどころかますます激しく、完全防水ではないペナペナのウインドブレーカーを雨が激しく打ちつけシャツまでじわじわ濡れてくるレベルになって来た。
樹林帯でもこのような状態なのだから、高山の稜線で悪天候に出くわせば低体温症になってもおかしくないだろう
何度もこのコースを歩いているので、周りの風景を見るとこの先の道をおぼろげながら思い出すはずなのだが、全く思い出せなかった。
露岩を濡らす雨で、脚の置場を間違えると、滑ってバランスを崩しそうなので慎重に歩く
右側に、シカ食害対策やシカの侵入防止柵が現れてやっと、ムシカリ峠が近いことが分かった。雨のしずくが帽子の縁から垂れてきてその度にタオルで拭きながら歩いて行く
あと少しだ・・・と折れかかる心に声を掛けた
ムシカリ峠に到着。ここで、ずぶ濡れのシャツを着替えるべく避難小屋方面に向かおうか悩んだ末に、山頂を目指した
三頭山西峰に向かう木段道に取り掛かると同時に、雨脚が強くなり横風が吹き始めこのまま霙が降るのではないだろうかと思う程外気が下がって来る感じがした。
西峰と巻道の分岐。ここからひと登りで山頂が近いことは分かっていたが、気持ちが山頂に向かわない。気持ちが萎えるとはこう言うことを言うのだろう。まき道に足を一歩踏み出すと同時に、風と雨が収まった
この先一時雨が納まることがあっても天気が回復することもなさそうなので、この時間を有効に使い山頂を目指す
誰もいない山頂
三頭山に到着。思わず自分でこしらえた行程表を見てみると、予定時間とほとんど差がなく山頂に着いたことが分かったが、気持ちは奥多摩三山には向かう気力は残っていなかった。
さぁ~今日はこれで帰ろう